2010年12月5日日曜日

次のステップへ  みなさん ありがとうございました

こんにちは。佐藤です。


11/21に日本を出国し、ホンジュラス、コスタリカとまわってきましたが、昨日全プログラムが終了し、本日帰国の途につくことになりました。2週間にわたって毎日書いてきたブログもこれで終了となります。終わるにあたって、今回の訪問の感想を少しまとめてみたいと思います。

 まず、今回の訪問で一番嬉しかったことは、来年早々にコスタリカで自立生活センターを立ち上げることが決まったことです。これまでメインストリーム協会に研修に来た6人の障害当事者のうち5人がペレセレドンに集まって、自立生活を実践し、自立生活センターを立ち上げることになりました。生活費はどうするか、いろんな機関に交渉して実現しようと考えていますが、まだまだ未確定なものも多く、険しい道のりが予想されますが、5人がまとまって決断したことに、心から祝福をしたいと思っています。
まだスタート前ではありますが、ここまで来たのはコスタリカのメンバーの強い想いと、JICAのみなさんのご支援、そして来日したときのメインストリーム協会のメンバー全員のがんばり(盛り上げ)が結びついたものだと思っていま。きっと、関わってくれたみんなが、自分のことのように喜んでくれていると思います。
コスタリカで自立生活運動センターの運営が軌道に乗るように、メインストリーム協会はこれからも支援を継続していきたいと思います。

2つ目は、中米全体で自立生活の理念が広がってきていると言うことです。ホンジュラスとコスタリカを訪問しましたが、いろんな人から自立生活という言葉を聞きました。この自立生活という言葉は、古い理念である「経済的な自立」を意味して使っているのか、私たちの自立生活運動の理念である自立生活という意味で使っているのか、どちらかわかりませんでした。そこを問いただすと、みんなが自立生活運動の理念で使っていると答えました。なぜ、こんなに広がっているのか?それは、研修生が帰国後に様々な人や場所を訪ねて、日本で学んだ自立生活の理念を伝えていたのです。帰国研修生たちの努力によって、中米にも確実に自立生活の理念が広がっていました。いますぐに自立生活センターという形で実現できない国もありますが、この動きは今後必ず良い方向に進んでいくと感じています。



昨日のまとめの全体ミーティングで、家族からの自立について全員で議論をしました。自立生活運動をするにあたって、家族からの自立というのは大変重要なポイントです。スタッフ自身が家族から自立しているかどうかは、そのセンターの運動全体に大きな影響を与えるのです。これまでメインストリーム協会では、パキスタン、ネパール、カンボジア、台湾、韓国、モンゴルの自立生活センターの支援をやってきましたが、国によっては大家族制で、家族から離れて暮らしたくないという文化の国もあります。この文化を超えられるかどうかが、その国で自立生活運動が発展するかどうかの鍵を握っていると思っています。中米も家族との同居という文化が非常に強い地域です。ここでスタッフ自身が本当に家族から独立し、自立した生活を実践するかどうか、私たちが気になっていたところなのです。
そこで、昨日、最後のまとめでこのテーマを取り上げて議論したのですが、かなり興味深い話し合いになりました。これを読んだら、こちらの国の人たちの感覚や、これからやろうと思っている気持ち、そして、日本にいるメンバーが3年にわたって伝えようとしてきたことが確実に浸透していると実感することが出来ると思います。廉田の説明の仕方も非常にうまく、興味深いです。
今回の訪問のまとめとして、昨日のこの議論の様子を全文掲載し、2010年中米訪問のブログを終わりたいと思います。



■テーマ;家族からの自立につて
○ルイスアルベルト(コスタリカ)
障害者が家族と一緒に住んでいても、親は支配的じゃないという家庭もある。そういうのも考慮して欲しい。家族と一緒に暮らしていても自立できるということを考えてみてもいいんじゃないか。家族と離れて暮らすのは中米では難しい。家族同居の方がコスト的にも削減できるということもあり、同居している面もある。
○ホセマリア(グアテマラ)
両親と同居していたら、両親が死んだときのリスク高い。いなくなったら1人で暮らしていけない。なので、離れて暮らしていた方が良い。障害者の成長を考えたら、離れて暮らした方が良い
○ルイスアルベルト
中米の文化では、障害を持っていない人でも家を出て独立して生活していない。自立生活の前提条件で家族と離れるというのを入れると、文化的な違いがあって、うまく進まないのではないか。文化の違いを考慮すべき。
○ホセマリア
グアテマラでは、今、ある障害者が自立生活運動に参加しようとしている。彼は家族と同居していて、居心地が良い。家族にいろんな面で助けてもらえるから。責任を負わずに自立したいと思っている。居心地が良いから残るのではなく、本当に自立するためには家族と離れた方が良い。
○ホセアントニオ(ニカラグア)
ルイスとホセのコメントは、1つ同じ点に触れている。経済的な点。障害者は経済的な自由がないと、家族に支配されてしまう。だから、障害者が経済的に自立しないと自立生活が成り立たない。家族がお金を払っている間は家族のいうことを聞かないといけない。
障害者の中には年金をもらっている人もいる。その年金を家族(両親)が管理したいという家もある。それは、障害者の年金を家族が欲しいから、独立させたくない。年金が家計の一部になっている。
○サンドラ(ニカラグア)
私たちが運動を行う上で、私たち自信がモデルにならないといけない。初めて自立の考えを聞く障害者は、家族と離れるのは怖いと考えている。今日参加している私たち全員が自立生活のモデルにならないといけない。私はニカラグアで戦争があり、やむを得ず自立生活をした。大変だったが、あのときから自立を始めて良かったと今は思う。ここにいる人の中には家族と離れて暮らすことに不安を持っているかもしれない。いま不安があっても、将来的には必ず、あのとき自立して良かった思える。
○ルイスアルベルト
ラテンアメリカでは、サボるのが習慣。政府が年金制度を作ったら、わざわざ働かなくなる。自立生活は自分の決断権がある。社会に貢献する義務があるにもかかわらず、貢献しなくなる。矛盾するのではないか。
○ウエンディ
自立生活の理念は、年金制度や介助制度を作り、障害者はそれをもらって生活する。そのかわり、社会へ貢献への義務もあるんですよ。もらったものを返さないといけない。仕事や講演を通して、自立生活の理念を社会に広げる役割を果たすことが必要。
私はホセマリアの意見に同意します。すぐに自立するのではなく、徐々にすることが大事。私は最初怖かった。このプロセスに参加してやっと来年、家族から離れて自立生活をする決心をした。知識がなかったら,急に家族から離れろといっても理解されない。ある程度長い間、理解を深めてから家族と離れるようにした方が良い。
○カローラ(ホンジュラス)
ホンジュラスで自立生活運動を始めたときに、家族に何度か講義をした。多くの家族は反対意見を言ってきた。私が「もし、あなたたち両親が亡くなったら、子どもは1人で生きていけるのですか?」と聞いたらみんな黙った。そういうのをみせた後に、両親に話したのは、あなたに今できることは、両親が亡くなっても生活できるようにしてあげることですよ。家にいながらでも、子どもの決断を尊重する、自立する支援をする、障害者にも家族に頼らずに自立できると働きかける。最初から家から出して自立させるのではなく、準備していくのが良いんじゃないですか。
私の家族には障害者が私の他にもう1人います(弟)。弟は私より重度。父は、自分が死ぬ前に彼に死んでもらいたいといつも言う。子どもは親よりも長生きして欲しいというのが普通の親の願い。障害児の親は逆になる。私がお母さんなら、子どもに長く生きて欲しい。
○ロレーナ(グアテマラ)
今話している議論は単純。家族を離れて1人で住んだ経験のない人は怖いし不安。1人で住んだ経験がある人は、住めるという実感がある。私は息子と2人で生活している。だから、不安もなく慣れた生活。1人暮らしは大変だけどできますよと、人にアドバイスすることができる。私たちの仕事は、初めて自立する人にサポートすること。それをするためにはみんなで協力し合うことが必要。自立している人同士が協力し合う。1人で住みたい人に、住んだことがある人がアドバイスしたり、サポートする。
ルイスは家族と一緒に生活して居心地が良い。ウエンディは家族と住んでいるが自立したい。だから、来年自立する。ルイスさんに対して良い事例になる。
○マイノル(コスタリカ)
3ヶ月前に家族を対象とした研修をした。自立生活に関わるプロセスを説明した。なぜ、自立しないといけないのかなど。それ以上に家族に対してあなたの子どもは自立する権利がある。家族にも(子どもの介助から)自由になる権利がある。ワークショップに参加した家族で、あるお母さんだけ反対した。外部の人に大事な子どもの面倒はみせられない。心配だからそんな制度は使いたくないと言っていた。自立生活運動の進め方は、障害者だけにすすめるのではなく、家族に対しても同時にやらないといけない運動です。
ロレーナさんの意見に賛成する。この分野の教育を中米で最初に受けたのは私たち。私たちがモデルにならないといけない。簡単にできることではないというのは知っている。自立生活は簡単にできることではないと理解した上ですすめること、私たちがモデルになってすすめることが必要。
○廉田
親のプログラムも大事です。東京の自立生活センターは親のILPを早くからやっていた。20年前にメインストリームをはじめたときに、親のプログラムをやろうと思ったが、私たちは若かった。いくら親を説得しようと思っても、親の方が年上で強くて、あんたらみたいな若造にえらそうに言われたくないと怒られた。親は強い存在なのです。いまは私もいい年になって、障害児の親と同じくらいの年になり、やっと対等に話せるようになった。

自立生活とは何なのかハッキリさせたい。来年2月にコスタリカではピアカン講座やります。参加には条件があります。自立生活している人、もしくは自立生活を目指す人。私たちはILセンターのスタッフですが、スタッフになるためには条件があります。それは、自立している人。これは大前提。自立生活を教えるのだから自立していないと教えられません。
じゃあ、どういう状態を自立生活というのか。この人、親と暮らしているけど自己決定しているな、していないなという判断基準は出来ない。まず、大前提として親から独立しているのは誰もがわかりやすい条件。ルイスが言うように親と一緒にいても自己決定できる人はいるかもしれません。とっても優秀な障害者なら出来るかもしれません。それは全部の障害者の中で1000人に1人くらいのわずか人。障害が重度になればなるほどその割合は低くなる。
私たちが目指しているのは、優秀な障害者が自立することを目指しているのではないです。どんな障害者でも自立できるような社会をつくりたいのです。それは自己決定できる環境ということです。自己決定したことが実現できる環境。障害者の親子は独特なので、まずは親から独立することです。

みなさんの国もスペインの植民地だったと思うのですが、スペインから独立しましたね。スペインの植民地のままで独立とは言わないのですよね。スペインの植民地のままがいいですか? → NO (スペインには金を沢山盗まれた(サンドラ))
いろんな文化があると思いますが、中米は怠け者の文化だとルイスは言ってましたが、文化は文化であるが、自律の文化を創り出したのは私たち障害者です。障害者が作り出した自己決定という文化は健常者にも広がっています。私たちの自立生活というプログラムは親からの自立が大前提で、環境を整えていくのです。
カローラが言うようにいきなり自立は難しい。プロセスはいろんな形がある。日本のように環境が整っていても、自立するまでに3年かかった人もいる。
国連障害者の権利条約にしても、昨日の国会フォーラムにしても、私たち11人に自立する権利があると言ってましたよね。一人ひとりが自立した生活を送れる環境を作ることが私たちの仕事。目指しているのは親からの自立ということを共通認識としたい。

※おまけ廉田
障害者観を変えること。私は障害を治したいとは思っていない。障害のある自分が好きだから。障害があって生きていく人生が楽しいと思っているから。そういう考えで生きていくと、健常者はビックリすると思います。イメージが変わる。
障害を治して欲しいのではなく、社会の方を直して欲しいと思っている。健常者に障害者になりたいと思わせる社会にしたいと思っている。



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