志を世界へ: セミナー！

こんばんは。井上です。ホンジュラスも３日目になりました。まだ時差ボケに悩まされていて、おかしな時間に寝たり起きたりしています。今日も朝早く起きてしまったのですが、ホテルのカーテンを開けると夜明けの美しい風景が入ってきました。

さて、今日は中米研修最初の研修生カローラがオーガナイズしたセミナーの日です。ぼくらが滞在しているマリオット・ホテルのセミナー室に朝早くからホンジュラスの障害者や支援者関係者が集まって来ています。人数は７０人くらい、そのうち障害者は２５人くらいです。受け付けは日本で研修したサラとケンシーがやっていました。

セミナーは９時３０分の定刻に始まり、カローラの挨拶の後、自身が障害者でもある政府の社会開発庁や内閣府の人のスピーチがあり、お昼前廉田さんの講演が始まりました。

ぼくは中米研修が決定して、２００８年６月に初めてのコスタリカに視察に行ったときから、こちらで廉田さんがやる講演は全部見ているのですが、今日もいつものように廉田さんが「日本からここに自立生活運動を広めに来ました」と勉強したスペイン語で挨拶するところから始まりました。これは、少し置いて「それと恋人を探しに」と加えて会場を沸かす仕掛けになっていて、今日もちゃんとウケることができました。

廉田さんが、中学時代に学校の体育館の屋根から落ちて障害者になったことや、大学に入って旅行を始めたこと、TRYを始めたことなど自分史を話した後、畑くんの一日を追ったビデオを見てもらいました。畑くんのビデオも最初に使っていたものから今は２代目になっているのですが、百聞は一見に如かずというのか、このビデオの効果はほんとにいつも驚かされます。話を聞いているだけではピンと来なかったことも、ビデオで実際に日本で重度の障害者がどういう風に暮らしてるかを見ると、ほんとにすぐにみんな興味を持って感心してくれます。畑くん独特の楽しそうにしている様子もいいですね。それを見てから質問を受けて答えていると、どんどんイメージが具体的になり、こういう生活をするには何が必要かが理解できて来るようになります。

昼食が終わったら今度は佐藤さんの話です。佐藤さんの話のテーマは「日本の障害者の制度と障害者運動」ですが、佐藤さんもまず、障害者になった頃の話や施設に入っていた頃の話、大学時代の話など自分史から始めました。そして生活保護・介助制度・バリアフリー法など日本での障害者制度について話した後、それは黙っていて整備されたのではなく、障害当事者自身が運動して獲得してきたものだということを強調しました。さらに、西宮市でじっさいにどういう風に交渉をやってきたかをレクチャーしました。佐藤さんの話は、現実にこれまで役所と交渉してきたテクニックを披露するもので、団体交渉するときにうまく話せない人には「じっと役所の担当者の目を見ておいてほしい」と指示することなど細部におよび、昨年８月のニカラグアでのセミナーでもとても好評だったものです。当事者運動がニカラグアほど盛んには見えないここホンジュラスですが、この話が役に立つ日が来ることを期待したいですね。

さて、セミナーにはホンジュラスで活動している関連分野の協力隊員も招待されています。この招待は昨年のニカラグアでもセミナーから始まったのですが、セミナーで聞く話はホンジュラスの人たちだけでなく、若い日本の協力隊員にも新鮮でインパクトを与えていたようです。セミナーが終わってから協力隊の人たちと一緒にホテルのレストランでご飯を食べました。

今日の予定の最後はメインストリーム協会で研修を受けた帰国研修生４人、カローラ、サラ、ケンシー、エンジャの４人とのミーティング。この１年間の活動とこれからの予定を話しました。

際立った活動をしているのはやはり、今日のセミナーの準備をやってくれたカローラです。昨年１１月に大統領選挙があった際その候補者４人に、政策に障害者に対するものを入れるように約束させるフォーラムを企画して実現しました（残念ながら１年たってまだ何も具体的になっていないそうですが）。

今年に入って１月にボランティアで介助をしてくれる人にたいして研修をしました。さらに２月にその介助者を使って、これまで家からほとんど出たこともない１５人の障害者を一泊旅行に連れて行くと言う企画をやりました。とても好評だったようで、それまで過保護になって家から出そうとしなかった親も、それ以降子供を信頼して以前より外出がやりやすくなったそうです。今日のセミナーにもそのときの何人かが来ていたようです。

研修生たちがみんな別々に帰っていくのを見送って、さっきカローラが旦那さんのベナンシオに迎えに来てもらって帰って行くのを見送ったところです。今は現地時間で１１時を回ったところです。ふぅ、やっと長い一日が終わりました。明日は朝８時から政府の関係者との朝食会です。国会議長や大統領夫人の参加が見込まれていて、ひょっとしたら大統領も出席するかも知れないそうです。ぼくらは日本でその結果まで予想しながら関わっているわけではないのですけれど、ちょっとだと思った波紋がだんだん広がっていくのがこちらにいると実感できます。明日もそんなことをまた目の前にするのを楽しみにしています。